ep11. また新しいアルバイト

ep11. また新しいアルバイト

またアルバイトを探すことにしたわけだが、なかなか仕事が決まらなかった。アルバイトの応募先からは返信がなく履歴書を送る段階にも至らなかった。一か所だけ面接に行けたところも、後で予定を連絡する、と言われたきり、連絡が途絶えた。仕事が決まるまでとやっていた単発の仕事先とも、理由は分からないが連絡すら取れないハプニングが続いた。

こんなに連絡がつかず、仕事が見つからないなんて奇跡的だ、そう思った。

ちょうど同時期、私は、断捨離のつもりで、ラインの連絡先を消した。詐欺に遭ったことも影響しているが、本当の自分を出さずに作った人間関係を一掃し、新しく想像する未来のために準備しているつもりだった。知り合いの中にはもちろんいい人も居たので、申し訳ない気持ちもあった。しかし結局私は、何かを失ったら、もっと大きな何かが手に入る、そんな経験があったので、消すことにした。しかし今回はすぐに何かが手に入る、というわけではなかった。

数か月間、ほとんど一言も発する機会がない毎日になった。私は一人になりたい、と思う方だ。しかし「人と喋りたい。人と喋りたい。」という考えが止まらなくなった。(それでも両親とは話さない方がましだったから話すのを避けていた。)

数度、単発のアルバイトで人と楽しく会話出来たときがあった。その日は短い睡眠時間でもよく眠れ疲れが取れた。―笑うことが大切なのか?

それからオンラインサイトや携帯のアプリでも話せる人を探した。連絡先を自分で消しておきながら自分の目的と違った方向に進んでしまったのかもしれない。インターネット上で出会う人たちのほとんどは、おかしな人で、ひどいことを言ってきたり裏切ってきたり騙してきたり、そういう人たちだった。私は何度も気分が悪くなりエネルギーを奪い取られた。

仕事に応募してから一か月以上開いて、一つの会社から返信が来た。私が応募したのは体力仕事だった。今まで現場系は本格的にやったことはなく周りには絶対反対されるだろうが、少しずつ周りに言われたことを気にせず行動するようになっていた私は、「運動して健康に良さそうだし、接客系の仕事で感じていたストレスがなくなりそう。」と、その仕事に決めた。

実際やってみると、接客の仕事より楽で、アルバイト期間だけでいえば一番長く続いた。

しかしそこの職場の人とは、話が合わなかった。勝手な印象で人を判断する人、悪口しか発さない人、思い込みで事実が分からなくなっている人、他人の価値や才能を否定しおせっかいなアドバイスをする人、、、。

また私には、価値観の違う親と社会からのそれぞれのプレッシャー、さらに仕事や治療のために、この地元にいないといけないことまでもプレッシャーに感じ、私の中に”できない”思いが増大し、付きまとった。

ここで働き続けるべきなのか、、、?

その時期、私は他のことでも忙しかったせいか、ある朝突然手が動かなくなった。私の大切な手が動かない。予想外の出来事に私は怖くて泣いた。

次の日から仕事は不可能で、辞めた。

ちょうどその頃、驚くことに、知り合いの人が経営する会社から、カンボジアに、私は父と共に招待されていた。

仕事を辞めたので、そのままバックパッカーをして滞在をしようか考えていた。そのときたまたま知り合いの人でバックパッカーをしていた人に出会い、彼女の話を聞いて、バックパッカーで少し旅をすることに意思が傾いた。

2か月ほどすると、旅がぎりぎり出来そうなくらい手が動いた。その後カンボジアに向かった。

日本からの移動とカンボジアでの数日間父と一緒に過ごした私は、顔がパンパンにむくんで調子が悪かった。自分本位な親が近くにいると、私は気遣って自分の意見を言えずストレスが溜まり体の巡りが悪くなる。

そのあと父と別れて一人になり、ようやくむくみが少しずつ取れ体調が良くなった。一人になってストレスが減り、アジアの暑い気候のおかげもあってか、手の違和感も少しずつ消えていった気がする。

アジア、バックパッカーの旅が始まる。

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